AI×ブロックチェーン | 経済の在り方はどう変わる?

“すべてトークン化”とそれが生む“超高速流動性”の先にあるものについて考えてみル。

1. 「トークン化」とは何を変えるのか:資産の“表象”が制度になる

トークン化(tokenisation)は一般に、現実資産や権利を分割可能なデジタル表象として台帳上に載せ、移転・決済・担保化をプログラム可能にすることを指します。金融市場では「デジタル・ツイン(digital twin)」として説明されることもあります。

ここで本質的なのは、単なるデジタル化ではなく、

  • 所有・移転・清算・担保が「契約・登記・清算機関」から「コード(プロトコル)」へ移る
  • 取引後工程(ポストトレード)を含めた摩擦が減り、即時性が増す
  • “資産”の定義が広がり、これまで市場化されにくかったものが金融的に扱われうる

という点です。

ただし、政策面の報告では「期待の大きさに比べ、規制準拠のトークン化資産の普及はまだ限定的で、理由の分析と監督上の論点が残る」とも整理されています。
つまり「技術的に可能」=「市場として成立」ではない。


2. 「すべてトークン化」=経済の金融化が極限まで進む、という含意

“あらゆるもののトークン化”はしばしば、「民主化」「流動性向上」として語られます。一方、学術研究では、トークン化がモノや関係性を“金融資産化”する力学そのものに注目し、ガバナンスや市場構造に与える影響を論じています。

ここで起きうる変化は二面性があります。

2.1 効率化・アクセス拡大(ポジティブ)

  • 小口化/分割所有により投資参加の敷居が下がる
  • 決済・照合・管理コストの削減、即時性の上昇
  • 担保化や組成が容易になり、新しい金融商品設計が進む

2.2 リスクの再配分(ネガティブ)

  • 価格変動が資産の末端まで伝播しやすい(連鎖的清算など)
  • ブリッジ等の接続点がシステム上の脆弱性・集中点になりうる
  • 「流動性が高い」こと自体が不安定性を増幅する場合がある

金融安定の観点では、国際的にもトークン化の含意を整理する報告が出ており、効率性の一方で、運用・相互運用・清算・関連サービスの構造変化がリスク要因になり得る点が議論されています。


3. 超高速流動性がもたらすもの:経済は「市場」から「連続評価システム」へ?

問いの核心はここ?
もし、価値の発生→測定→交換が極端に短い周期で回ったら、経済は何になるのか。

3.1 “価格”の役割が変わる

古典的には、価格は情報を集約し、資源配分の指標になります(市場=情報処理装置)。
しかしトークン化が徹底され、あらゆる権利・期待・成果が即座に取引されると、価格は「結果」ではなく行動と同時に生じる評価に近づきます。

結果として起きるのは、

  • 年次・月次といった評価の「バッチ処理」から
  • 常時更新される「ストリーミング評価」へ

このとき経済は、直観的に言えば “連続的なスコアリングと再配分の仕組み” になっていきます。

3.2 ただし「流動性=善」ではない

2025年の研究でも、RWA(現実資産)トークン化の議論は盛り上がる一方、「技術的進展」と「流動性の実現」の間にギャップがあることが強調されています。
現実には、法的権利、強制執行、情報開示、信用補完、マーケットメイクなど、非コード領域の制度が流動性を左右します。


4. AIが入ると何が決定的に変わるか:参加者から“市場そのもの”へ

ブロックチェーンが「ルールをコード化する装置」だとすると、AIは「意思決定・最適化・予測を自動化する装置」です。
両者が結合すると、市場の意思決定(売買・担保・清算・再投資)がエージェントに委譲され、取引主体が“人間中心”からずれていきます。

AI×ブロックチェーンの研究サーベイでは、分散システム上でのAIエージェントの協調・安全性・スケーラビリティや、DeFi/資産運用/自律システムなどへの応用が整理されています。

このときの本質的転換は:

  • 人間:価値創出(創造・意味付与・関係構築)
  • AIエージェント:価値配分(評価・最適化・執行)
  • ブロックチェーン:価値の記録と強制(透明性・改ざん耐性・自動執行)

という分業が進み、「市場参加者」よりも市場の運用ロジック自体が半自律的になります。


5. 経済が「何になるか」を決めるのは、技術より“ガバナンス”である

プロトコル上の世界は「信頼できる裁判官」を前提にしにくく、形式的・透明なルールの重要性が極端に高まります。Vitalik Buterinも、裁定者の不在がルール設計とガバナンスの難しさを露呈させる点を論じています。
さらに分散の理想が、実際には不完全・漸進的であることを指摘する研究もあります。

つまり、「すべてトークン化された経済」が何になるかは、次の設計に左右されます。

5.1 価値の“発行権”は誰が持つか

  • トークン発行・配分のルール
  • オラクル(現実世界データ)の統治
  • 評価AIの学習データと目的関数
    ここが集中すると、経済は“分散型”の見た目でも実質は寡占化し得ます。

5.2 「救済・猶予・例外」をどう扱うか

現実社会の制度は、例外処理(裁量)で人を救う局面があります。
コード化は透明性を増す一方、例外の扱いを苦手とします。ここをどう設計するかで、ディストピアにもユートピアにも振れます。


結論:その経済は「価値が凍結されない世界」になり得る

AI×ブロックチェーンで極限のトークン化と流動性が実現した経済は、
「価値が常時再計算され、リアルタイムに再配分され続ける制度」へ近づく。

ただし、その世界は自動的に良くも悪くもなりません。
国際機関の議論が示すように、トークン化は効率性と同時に金融安定上の新しい論点を生みます。


トークン化は“資産化・金融化”の力学でもあり、社会的価値の扱い方が問われる?


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